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偽性軟骨無形成症

ぎせいなんこつむけいせいしょう

Pseudoachondroplasia

告示番 号15
疾病名偽性軟骨無形成症
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概念・定義

偽性軟骨無形成症は四肢短縮型低身長、下肢の変形、短指、関節弛緩性などを特徴とする常染色体優性遺伝の骨系統疾患である。
特に近位肢節の短縮が目立ち、軟骨無形成症に類似した外観を呈していることが、本症の名称由来となっている。
しかし、軟骨無形成症とは異なり、顔貌は通常は正常である。低身長は著明で、最終身長は軽症型で-3~-4SD、重症型で-6SD以下となる。
また、手指・足趾の短縮や関節弛緩性が著しい。四肢の大関節でも関節弛緩性は著明で、著しい内反膝または外反膝の原因となる。
しかし、肘関節や股関節では屈曲拘縮を認める。比較的早期(10歳代後半から20歳代)から下肢関節の変形性関節症を呈する。
脊柱変形もしばしば認め、早発の変形性脊椎症を発症しやすい。

病因

遺伝形式は常染色体優性遺伝であるが、実際には散発性に突然変異として発症することが多い。
健常両親から複数の児が産まれた家系では、性線モザイクが報告されている。軟骨の細胞外基質成分で、
軟骨細胞内でのカルシウム接合にかかわるCOMP (cartilage oligomeric matrix protein)の遺伝子変異によって発症する。

疫学

本邦での患者数は不明であるが、日本整形外科学会骨系統疾患全国登録によれば、1990-2015年の26年間に64例が登録されている。海外では、発生頻度は100万人に4人とする報告がある。

臨床症状

出生時身長は通常正常で、出生時には明らかな異常は認めないことが多い。幼児期に始歩の遅延、あひる様歩行、
身長増加の急激な低下などを契機に初めて本症が疑われ診断にいたる。低身長は著しく、最終身長は軽症型で-3~-4SD、
重症型で-6SD以下となる。関節弛緩性が強く、これにより下肢においては著明な内反膝または外反膝変形を呈する。
ただし、肘関節や股関節では屈曲拘縮が見られることも多い。脊椎では腰椎前弯が著しく、年長児では側弯などの脊柱変形を認めるようになる。
環軸椎亜脱臼を合併することもある。股関節や膝関節など、下肢荷重関節では比較的早期から変形性関節症を発症する。
軟骨無形成症と異なり、顔貌異常は見られない。知的発育異常も伴わず、骨格外の合併症がないことも特徴である。

検査所見

X線所見
  • すべての管状骨の短縮、骨幹端部の拡大と不整、小さく不整な骨端
  • 脊椎側面像での椎体中央部前面の舌状突出(anterior tongue-like protrusion)
  • 著しい短管骨の短縮(brachydactyly)
血液検査所見(特殊検査)
  • 血中COMPの低下

診断の際の留意点


  • 軟骨無形成症とは異なり、顔貌は正常で明らかな三尖手は認めない。
  • X線学的にはムコ多糖症(特にMorquio病)との類似点が多いが、Morquio病では体幹短縮が目立つのに対し、本症は四肢の短縮が優位である。
  • 重症型の多発性骨端異形成症と四肢の所見は類似するが、本症の方が脊椎の異形成が著しい。
  • 成人例では変形性関節症や関節変形のために診断は困難である。

治療

本質的な治療法はなく、頻度の高い骨・関節についての障害には対症治療で対応するしかない。
大関節における関節症性変化が比較的早期に出現する。このため、小児期には下肢のアライメント異常に対する骨端線抑制術や
矯正骨切り術が必要となることが多い。変形性関節症悪化のおそれや、関節弛緩性による関節変形が危惧されるため、
低身長に対する四肢骨延長術の適応はない。環軸椎不安定症の存在には注意が必要で、手術的な介入が必要なケースもある。

合併症

骨格外の合併症はない。

予後

四肢および脊柱変形、変形性関節(脊椎)症が早期より発症するため、それらに対する治療は患者のADL向上のためには不可欠であるが、
必ずしも予後を保証できるわけではない。したがって、成人期以降も継続的な治療や療養が必要となる。
小児期に種々の矯正骨切り術などにより関節の変性予防には努めるが、成人となり最終的なサルベージ手術として
人工関節置換となる可能性などについて、頻回かつきめ細かい対応が必要である。

成人期以降の注意点

早発の変形性関節症、変形性脊椎症を発症するため、長期にわたりそれらに対する対応が必要となる。
自然経過で成人の50%が人工股関節置換術を施行されたという報告がある。加齢とともに、関節障害に起因する移動能力の低下、
ADLの悪化が生涯にわたり危惧される。

参考文献


  • 日本整形外科学会作成の診断基準
  • Herring JA. Tachdjian’s Pediatric Orthopaedics 3rd ed. W.B. Saunders Co., Philadelphia, 1523, 2002
:バージョン1.0
更新日
:2017年3月17日
文責
:日本小児整形外科学会
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